つよく生きているか

2019〜2020のくらむせかい,くらむの日記

7月26日金曜日

深夜0時半、眠れない。寝つけないひとはスマホを見ているに決まっているとおもっていたが、暗闇の中で目を閉じて、考えて、3時間が経った。このままで眠れないだろう。何時間でも、まぶたの中で考えるだろう。
・明日のは医者について、「自分で行く?」と母が言った。数回図書館に行ったら、もうこうして、放り出される。ととっさに考えてしまう。その事実も実際あるだろう。出掛けると、わたしの1部がわたしに帰る。ひとりで背負わねばならなくなる。当然のことではないか。しかしわたしには怖い。
・車が止まる。「殺人者だ」その後、車は反対方向に去る。どうやったのだろう。バックしていったのか。
・求人のことであたまがいっぱいになっている。
・なにかをあきらめて受け入れねばならない。たとえば腹痛や、いじめや、知能を使うことや、通勤距離。そのうえ家族からは分離して、わたしひとりの責任になって、休まる場所は永遠にない。そこまで言わないにしても、腹痛ひとつとっても、どうすればいいのかわからない。トイレがひとつの職場は多いし、短時間勤務の身分でトイレにこもるなど許されない。早退は可能か。わたしの投げ出した仕事はだれかがせねばならない。だれが?

放り出さないでほしい。

すこし調子がよくなると焦ってしまう。いましかない、いまが最後のチャンスかもしれない。もうにどとここまでよくはならないだろう。
信じることはできない。
もっとよくなるなんて想像もつかない。
いや、想像はできる。夢だ。

父はいる。退職したからだ。その事実はきっと永遠だ。父がまだ在職中で、わたしが高校を中退したあとの1年間のことを考えてしまう。あの1年で立ち直った自分の姿を見てしまう。あのとき、母が受容してくれたから、わたしは立ち直れたのだろう。わたしはできなかったり、できたり、した。それでも、そこからは歩いていくだけでよかった。ひとつの道しかなかった。
はぴもいた。

いったいなにをどうすればいいのだろう。
たった数件の求人情報も整理できないでどうする。

ほらまただ。
できろ、できろ、できろ。
できないことをできねばならない。
それだけだ。

心細い。
わたしを見て。
平気なんかじゃない。
解離しているだけだ。
戻ったとき、こんなに苦しい。

2時になる。
生きること。生きないこと。死ぬこと。捨てられること。怖いこと

そんなにむずかしいことだろうか。
わからないわからない。

助けてほしい。支えてほしい。見捨てないでほしい。
とは…

しっかりしろ。
考えるな。考えるな。
生きるだけだ。
それができない。
できろ。できろ。

要求はひとつ、できろ。

生きる意味がないなんて考えるな。
お金を稼げるだけでも親孝行だ。
親を求めるな。求めるな。あきらめろ。
そして意味はなくなる。
それでも親孝行になるだろう。

心細いなら自分を殺せばいい。
できないなら自分を殺すのだ。
それだけだよ。
うん、わかった。
わかった。

生まれたみたいなものだよ。

4--5時まで1時間眠る。

歯医者に行く大きな道の交差点で右折を待っていると、自分の下のタイヤが破裂したような大きな音がした。
歯医者では歯石を取ってもらう。細い曲がった振動する機械で取る。とても大きな鋭い音がして、場所により、強い痛みがある。地獄かとおもう。ここは地獄なんだ。左手と右手が互いに爪をたてあう。力を抜いてしまった瞬間に痛みがあったらどうなってしまうのか。身体中が怯えていた。逃走逃走逃走…。とてもつらかった。憔悴した。つらかった。つらかった。

痛かった。怖かった。つらかった。痛かった。怖かった。つらかった。

帰り道、行き道よりもわかりやすい道を思い出して通る。区画整理がされていて、あとかたもない。

アルバイトはじめた場合の目標
・体力をつける
・気持ちに余裕をもつ
・お金の使い方を学んで貯金をする
・図書館の本を読む
・家族とすこし話せるようになる
・家族や親戚の手伝いになる
・アルバイトに気持ちをとらわれない

10年働いたら貯金もできるなとおもったとたん、10年後の自分の年齢を考えて…

年金ももらえないし、福祉もない。だから、あまり考えても仕方がない。
それよりも、自分の気持ちが安らぐことや、身体が安定することを考える。未来はないよ。もちろん、転職をしたりするだろう。けれど、わたしの人生がつづくことはない。
だから、目の前のことを大切に扱いたい。

生きている意味は未来にない。

ガソリンスタンドの新しい店員さんが、息を切らしながらも笑顔で駆け寄ってきて、「おはようございます!」と言ってくれる。驚いた。わたしに言っている。それもこんなに率直に。この店員さんはこれまでの新しい店員さんと同じく、古いひとたちに嘲笑われてきた。でも今日は、古いひとが、新しい頼みごとをしていた。信頼を勝ち得たのかもしれない。わたしも以前同じことをしたことがあった。
新しい店員さんの事情は知らない。
けれどそのひとの笑顔を見て、胸が苦しくもなった。ほかのところでは生きてよいと言われなかったのだろうか。

わたしは高校を卒業していない。
就職活動では「中卒」のあつかいになる。ハローワークの窓口で、自分は中卒だか、この求人には応募してかまわないだろうか、と問うたびに、心が苦しかった。怖かった。こんどはどんなふうにあつかわれるのだろうか。不安で、身体の芯から悲しみが沸き上がる。
「あなたのような中卒の人間がこの仕事を希望するとは何事か。あなたには水仕事くらいしかない。あなたは学歴を詐称して、いまの学校に入学したのだな。そちらの学校の校長とは関係がある身だから、この件については問い合わせをさせてもらう。自分から、詐称を告白したほうがよいだろうとおもうがね」
それは手書きの手紙だった。わたしは、自分が履歴書を出した先のひとが、自らの手で返事をしたためる姿がうまく想像できず、戸惑った。内容が異なっていれば…
わたしは怖いのだとおもう。他人のまなざしが。あれはわたしの罪なのか。そうなのだろう。わたしはわかっていなかったのだ。一生涯、高校を卒業できなくなるということを。わかっていたとしても、だいじょうぶだと信じただろう。ほかに道はないと信じただろう。実際そうだったのだ、ほかに道はなくて、わたしはその道から落ちて、にどと這い上がれない。
怖い。
「中卒」と言われることが怖い。そのひと言は、それまでの大勢のひと言を含有して、だんだんと強力なナイフに成長した。ひとりのまなざしが、100人のまなざしになった。100人のまなざしが、わたしの暮らす、一生を暮らすこの街に、敷き詰められてしまったようだ。歩くたびに、穴に落ちてしまう。

「一生このままなのか。変わりたい」とおもう。
同時に、「一生このままだ。受け入れろ」とおもう。
そのふたつの声は、父の声であり、母の声でもある。ふたりともが、両方の声をもっている。
わたしも、ふたつの言葉をもっている。

しかし、おそらくは無理だろう。
どれほど立派な人間になっても、「過去を変えたい」と言えないだろう。なぜならばそれは贅沢なことだからだ。裁縫の習い事(ズボンの裾を直すなど)にも行けないくらいだ。言えない。

変わってほしい。
変わるなんて贅沢をゆるさない。
ふたつの声。

ゆるさない。
愛さない。
ふたつの声。

恥ずかしい存在は隠されねばならない。
わたしは隠された。
正しくなって、ふたたび陽のひかりの中を歩いた。
やがて夜になり、わたしは道を転がり落ちる。
それからは永遠に夜だ。

「たったそれっぽっちしか働かないのか! いつか就職するだろうとおもって、これまで多目に見ていたのに」
そう言われるだろう。

耐えられそうかい?
なにに、なにに。

自分で決めるんだ。

まだ頭の中が落ち着いていない。

大きな場所に行く。身体がおかしくなる。冷たく、早く、遅く、身体がどうにかなって、胸がどうにかなって…
これが現実だった。
失望する。
それでも、やめることはできない。
そうだろう?

昨夜1時間睡眠だったことをおもえば、身体はすごい。普段と変わりなく動く。動いてしまう。今日は眠れるか。
昨夜は、眠れなくても、起き上がらなかったことがよかったのかもしれない。暗闇と壁、それしかない、長い時間は、本で読んだように、身体を休めたのだろう。あたまはそうはいかないが、あたまがよくないことは、まあよくあることだ!

母がシュークリームを買ってくれる。わたしがあまりに憔悴しているからかもしれない。まったく憔悴している。あんまりだ。母の歯医者では、4回に分けてする作業を40分ぎっしり使って施術を受ける。戒めなのかもしれない。精神がなんだ、仕事がなんだ、おまえの考えなどしらん、何年も歯医者に行かないなんて断じて許しがたい、半年に1度通わないと、また同じ目に合うぞ!
わたしよりも、点数のかさむ患者はたくさんいて、わたしはおまけみたいなものである、ということもあった。
怖かった。怖かった。つらかった。でもまた行かねばならない。そしてそのときは、自分で電話予約をして、ひとりで行かねばならない。寒いところ。

どんなに考えても妙案は見つからない。たぶんないのだ。
わたしの脳のシナプスが決める。
シナプスは、「荷が重い」と伝えあう。波になる。波はぶつかり、大きくなる。荷が重い、荷が重い、そっちで決めてくれよ、無理だこっちこそ無理だよ。シナプスの言い分に耳を傾ける。

まだ見ぬたぬきの計測。

「見て、すずめが稲を食べている。ホバリンクしながら。ということは、あの稲にはもう実が入っているのかもね」
すずめは、羽ばたいていた。稲穂と稲穂のあいだで、立ち止まるために、高速で羽ばたいていた。

「待って」

「時よ止まれ」

「ぬ」

「待たぬ止まらぬ」

形がいる。
理解がいる。
でなければ、わたしは動けない。
わたしは理解し、理解する。

現実のおそろしさ。鈍感になれ。無理なら、解離しろ。

うまくメモができれば、動けるか。